2013年5月17日金曜日

二羽の鳥のご縁の巻


“二羽の鳥”に出会ってしまったのは、もうしばらく前だ。
よく立ち寄るお店のウィンドウに懐かしい鳥の焼き物が出ていた。少し大きめで二羽の鳥が向かい合っている。価格は20ユーロを超えていた。考えるつもりで帰ったのが心残りの始まりになった。後日焼き物は消え、私は二度と見ることはなかった。
それはドイツでも一時期に流行った置物で、お婆さんの家にあるような、と称されるものだ。確かに私もずっと昔に友人宅のお婆さまの部屋で見た気がする。

一羽の鳥を美しく彩り焼き物にしたものも多い。小さくて可愛らしいものだ。

しかし私は二羽の鳥に出会ってしまった。ジョセフ・コーネルの夢を見た日、おそらく確実に閉店した店のショーウィンドーの中にオウムの剥製が二羽いるガラスケースを見つけた。
ハンブルグの最も古い町並みが残る一郭のカフェで二羽の鳥が跳ぶ壁紙を見た。
好きな店のウィンドウに二羽の陶器の置き物を見た。

私がようやく手にしたのはインコが二羽いる焼き物。ベルリンのフリーマーケットで見付けた。

“お婆さんの家にあるようなもの”と言っても、だれの家にもあったようではない。誰に聞いても自分のお婆さまが持っていたというドイツ人はいなかった…

展覧会の準備の為に訪れた小さい。第二次世界大戦当時の軍人の写真が飾られたアンティークショップに入ると、店主はアーティストか?と聞く。早く出たそうな連れを無視して細かく見入るとケースの中に、その鳥たちはいた。

押さえきれず価格を聞くと、店主はプレゼントしてくれるのだ。胸がドキドキした。

胸がドキドキするなんて久しぶりだ。

翌日、古い、本当に古い友人から10年振りくらいにメールが入った。メールには子供の頃私が彼女に送ったカードが添付されていた。

その陶器の置き物を洗うと、いかにもフツーのただ時間の経った、お婆さんの家にあるような鳥たちになった。

私は初めての彫刻作品をそので展示する。